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上司がウソをつく

 乗務員がミスをすると、上司はそれを厳しくとがめ、ミスが発生したことを乗務全職場に流します。翌日には、職場にポスターが貼り出され、たいへん重大な事故が発生したと公布します。そしてミスをした本人は職場から隔離され、"教育"と称して何日も下車勤務を強いられ、多くの場合しばらくすると除籍され職場からいなくなります。
 列車の運行を担当するのは、乗務員以外にも乗務助役という監督職の立場の運転士であったり、乗務員出身の助役であったりすることがあります。度重なる合理化で人員不足を補うために監督職が臨時に乗務に就くことはよくあることです。
 そして、助役や乗務助役がミスをすると、彼らはそれを隠匿しようとします。例えば、列車がオーバーランした場合でも、旅客がら苦情がなく、車掌の口を封じれば、しばらくの間はミスを隠蔽することができるというわけです。
 ウソはあとになってばれることもありますが、その際は異議を唱える乗務員にだけ形ばかりの謝罪をするか、居直りで切り抜けます。助役や乗務助役がミスのペナルティを受けることはあまりなく、職場から去ることもほとんどありません。
 どうしてこのような虚偽が横行するのでしょうか。いつからこんな風になってしまったのでしょうか。乗務員出身の監督職もかつては列車に乗務していたわけで、彼らが現職の頃は、ミスに対して責任を負うことは少なく、せいぜい報告書を提出するていどでした。乗務員時代に2度3度とミスを繰り返している助役は少なくなく、むしろミスしたことがない助役の方が少ないのですが、それは棚上げし、今現在現職の乗務員のミスは徹底的に追究するのです。そして監督職仲間のミスはのうのうと隠蔽する。
 監督職によるミスは、オーバーラン等の臨時に乗務した時だけに限りません。列車の増結や分離の手順を誤ったり、転てつ機の操作を誤ったり、非常事態に手動扱いの踏切で列車が接近しているのに遮断桿を上げてしまったり。運転指令の指示誤りでダイヤ乱れを拡大することもよくあります。乗務員以外のこれらのミスは、複数の係員が手順を確認しながら行なうのですが、それでもミスします。
 そして監督職によるこれらのミスは隠蔽されます。隠蔽しきれなければ、情報が拡大しないような工作が施されます。
 ある時、乗務助役の運転する列車がオーバーランをし、情報がリアルタイムで拡がってしまったことがありました。それに対し現場の幹部管理職は、列車の故障と公表し、車両交換の処置を執りました。車両交換はどこでもすぐに行なえるわけではないので、交換可能な駅まで列車は運転を続け、その間列車は旅客を乗せたま運転を続けました。
 この一件で恐ろしのは、故障を疑われている列車に旅客を乗せたまま通常運転を続けたということです。故障でオーバーランしたのが事実なら、故障箇所はブレーキです。旅客はブレーキ故障の疑いのある列車に乗せられていたわけです。本当にブレーキが故障した場合、今の幹部監督職は直ちに旅客扱いの中止を指示できるのでしょうか。また、運転士がブレーキ故障による旅客扱い中止を要請しても、そのまま車両交換まで通常運転を指示するようなことはないのでしょうか。
 職場では、この件がいつものウソでありブレーキが故障しているわけではなと分かっていたので、あまり騒ぎになりませんでした。イソップの「狼と少年」の状態です。職場にも安全意識の低下が蔓延してしまっているわけです。
 そして騒ぎが大きくならなかったために、同じウソは何度か行使され、ブレーキ故障と称される列車が旅客を乗せて走りました。ひどいものですね。

 ここまでして監督職を擁護し、乗務員を目のかたきにするのは、安全よりも利益優先の、つまり目先の利潤だけを追求し、将来性について何も考えない無能な労務政策がまかり通っているからなのです。
 人件費削減の名のもとに、せっかく育成した乗務員を追放してしまう、幼稚で非生産的な政策です。何かミスをしたら配転してやろう、会社はそれをてぐすね引いて待っているわけで、現場の監督職は安全に関する問題点を知りながら、保身のために悪しき労務政策に荷担し続けるのです。
 会社は、鉄道の安全と会社の未来を脅かす愚かな労務政策を続けるために多大な監督職を起用し、けっきょくそれに人件費を費やしています。生産性の低い職員ばかり増やし、輸送の安全と接客に直接携わる係員は削減し続ける、なんだか空しくなります。

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