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巨悪の構図

 最近の風潮として、多くの労働者が労働運動に無関心であるように思えますが、その大きな要因として、会社からの圧力があります。日本の多くの企業が、ずいぶん以前からレッドパージ政策をとって来ました。レッドパージとは、日本共産党の党員を"赤"と呼び、それをパージ(切り捨て)する政策です。共産主義は日本の資本主義を真っ向から否定しており、会社をつぶそうとしているなどと説明し、社員に対して共産党に与みしないように思想教育することが多くの企業で行なわれて来ました。
 しかしながら、思想信条の自由は憲法で保証されており、共産党員の人たちは多くの企業の職場で労働運動を盛り上げるべく頑張って来ました。筆者も若い頃は、会社の説明を真に受けて、日本共産党が資本主義を根底から否定しているのだと思っていました。実際には、会社が共産党員を排除したがるのは、彼らが労働運動の達人だからだったんですね。
 会社は、労働組合の役員選挙に不当に関与し、共産党員の役員当選を阻止すべく強硬な選挙対策を実施し、とくに若い社員を対象に成績と昇進をチラつかせ、たいへん厳しい圧力をかけて来ました。そして多くの社員が、会社を守るためにレッドパージが必要であると信じ、労働組合の役員選挙における会社の関与、つまり選挙対策は、職場で常識化して来ました。
 選挙対策では、組合役員の議席数の候補者を会社が選定し、選挙区(つまり職場)を数人ずつのグループに分け、グループごとに誰と誰に投票しろという指示を与えます。開票時に票読みを行ない、どのグループがどれだけこれに従ったかをチェックします。従わない者がいることが判明すると、そのグループは成績や昇進が不利になるので、従わざるをえなくなるのです。
 たいへん残念なことに、このような不正行為に現場の労働者みずからが率先して協力しているのが実情です。会社に人事権を握られ、昇級昇進をチラつかされたサラリーマンの悲しさと醜さが伺えます。
 こうして共産党員が労働組合の役員に当選する機会は失われ、企業の思惑通りに労働運動を弱体化させることに成功したのですが、共産党員が役員選挙で通らなくなっても、彼らが立候補を見合わせても、会社は不当労働行為の手を緩めず、組合役員人事はすべて会社が握り、民主的な立場の候補者を落選させるために、選挙対策を続け、今もそれが続いています。今ではレッドパージなんて関係なく、正当な立場の候補者すなわち会社をつぶそうとする会社の敵、そんなデタラメがまかり通っているのです。

 人事権を会社に握られ、労働運動組合の役員もすべて会社の思いのままという状況では、社員としては万事休すですね。労働者の団結力を脅威に感じることなく企業本意の政策を実施し、人件費の負担も大幅に減らすことに成功した企業は、経済的な自由を得たにも関わらず、収益の多くを労働者に還元していた頃より業績を悪化させています。人を育てることを忘れ、人を食いつぶすしか能がない多くの企業がどうなったか、今の不況を見れば、話すまでもないですね。

 日本のほとんどの鉄道会社で、今でも不当労働行為と、脅迫まがいの労務政策が続いています。JR福知山線の脱線事故では、企業の社員に対する大きな圧力が、運転士の操業ミスを誘発した可能性が指摘され、世論もそれに同調しました。企業は不正なやり方で労働運動を弱体化させることで、業績を悪化させたのみならず、輸送の安全さえも低下させ、けっきょく経営的に大打撃を受けたわけですが、それでもJRの体質は何も変わっていませんし、時間とともに世間の関心が風化するのを待っているようなわけです。ほかの鉄道会社も事情はまったく同じです。
 鉄道だけじゃなく、航空業界でも同じです。御巣鷹山の墜落事故で多くの犠牲者を出した日本航空では、あの屈辱的な事故のあとも、人を食いつぶす政策を緩めず、操縦士は、騒音と緊張と戦いながら超過勤務に耐えている状況ですし、過剰に強化される健康診断によって、熟練の乗務員が適性を失って地上勤務に移されたりしています。客室乗務員の超過勤務や契約社員化も世界一の水準です。

 企業の巨悪の体質とは、恐ろしいものです。経営者や管理職と言えども我々と同じ人間です。社長だって個人的に話しをすれば、会話は普通の人間と変わるところはありません。でも企業人になると、意見交換が不可能な別の星の生き物になってしまいます。彼らが盲信している縦社会の構造が、彼らを企業の部品にしてしまっているのです。
 そして大きな事故を起こし、尊い人命と共に、企業は信頼と資産を失います。投資家の大好きな株券も紙切れと化します。自滅への道をたどるために暴力による植民地政策を強行し続けた昭和の帝国主義とそっくりです。

 長く生きながらえた企業は必ず腐敗すると言われています。公共交通機関は長く生きながらえて来たうえ、国民の足として政治的に擁護されているので、何をやっても許されると思っているような感があります。とくにJRは、航空会社と同じで、政治的にひじょうに有利な立場にあります。日本の鉄道会社は、JRを手本にして労務政策を遂行し、数々の不正や不当労働行為を上手く強行するために、経営コンサルタントを雇っているそうです。そのような手間と経費を健全経営に充て、人材を育成すれば、長期的展望が開けてくるのに。

 このような巨悪に対して労働者は対抗し得る力を持ち合わせているのでしょうか。答えはイエスです。労働者が個人的な損得感情に流されることなく、職場仲間あるいは全社員さらには全国民の公益を考えて団結すれば、ひじょうに大きな力が生まれます。企業はそれを恐れ、団結力を分散させてくじくために、ひじょうに多くの監督職を起用し、経営コンサルタントに多額のお金を支払っているわけです。

 労働運動は企業を弱体化させるためのものではありません。労働者が財力や暮らしの安定とゆとりを持てば、消費が促進され企業も潤います。前述しましたように、人件費で倒産した大企業はありませんし、労働運動が活発だった頃は、企業にも元気がありました。
 会社がつぶれたら困るからとか、会社に逆らって自分が損をするのはイヤだからといって、労働運動を否定することは、けっきょく企業を腐敗させ、社員も得をすることはないのです。
 企業を活かし社員を潤わせ、明るい人間社会を築くのは、我々労働者です。政治家や資本家に責任を丸投げしていても世の中は良くなりません。

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