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労働運動を妨げるもの

 大手企業において労働運動が下火になってしまった要因は、別項でも述べましたように、経済成長によって人々が経済的に豊かになり、保身に走る人が増えたからですが、これ以外にも、労組の組織が複雑になってしまったこと、運動をリードして来た集団が後継者を育てられなくなってしまったことが深刻な問題になっています。
 もちろん、企業側の圧力、攻撃的な労務政策や不当労働行為などが、運動を妨げている最大の原因ではあるですが、それは企業の問題であり、それを跳ね返すのが労働運動です。

 むかしは、労働者みんなが貧乏で、統一要求がはっきりしていました。「明日の米代よこせ!」ということでみんなが一丸となることができたのです。運動が成果を上げ、労働者が経済的に豊かになると、個人々々の要求が多角化してゆきました。もっとお金が欲しいという者、お金よりも労働を軽減して欲しいという者。それぞれの思惑のちがいが立場の相違を産み、団結力を疎外することにもなりました。運動よりも企業に依存して保身に走る者が増えたのはこうした状況からで、企業はこれに付け入り、昇進や昇級をチラつかせて個人々々をバラバラにして行ったのです。

 労働者が豊かになり、労働組合も財力を貯えると、組合機関の設備が立派になり、部所が増え、組織が複雑になりました。個人の要求を組合に提出するにも多くの手続きを踏まねばならなくなり、なんだか組合が遠い存在になっていったのです。
 労働組合はすでに長い歴史を持っており、複雑な組織体制と難解な専門用語で武装しています。若い社員にとってこれを攻略するのは至難の技で、何が何やらさっぱり解りません。古い人間にとっては、労組の歴史も専門用語も運動の中で自然に身についた言わば常識なのですが、若手にとっては目の前に立ちはだかる巨大な壁です。これでは若い人たちに組合離れを奨励しているようなものです。

 私鉄業界では、労働組合だけでなく、企業内の様々な文化活動も、職場の実態を作品に著し、労働運動に貢献して来ました。全国の私鉄労組を統括する機関である私鉄総連もこれを支持し、写真や漫画、文学といった企業内文化サークルが、全国レベルの創作活動を展開しました。
 しかしながら、文化サークルも労働組合と同じで、後輩育成に苦慮し、その活動は下降の一途をたどるようになってしまいました。文化サークルにおいても、輝かしい歴史の重みが、若い人たちの前に壁として立ちふさがったのです。今の時代、企業内の文化サークルに所属するよりも、個人で遊ぶ方が楽しいし、創作の場も広がります。鉄と汗の臭いのする労働者文化なんて年寄りの昔話みたいなもので、あまり面白くありません。
 若い人たちには、若い人たちの表現方法があり思想があります。現代人の文字離れを指摘する声をよく聞きますが、筆者の知る限りそれは間違いです。若い人たちの電脳ツールを介した表現力と情報発信力、コミュニケーション能力は、古い人間のそれをはるかに凌駕しています。漢字もたくさん知っています。
 労働者文化の後継者を育成できないのは、古い人間が、過去の栄光を振り回すばかりで、今の文化事情を知ろうとしないからです。テレビやパソコンで育った人たちの方法論に対して、活動の場を与えようとしないからです。文化の灯を絶やさず後世に伝えて行こうとするならば、守ること以上に変わる努力が必要です。

 若い世代の労働組合離れ、企業内文化離れに対して、それを担って来た人間はもっと斬新な発想で考えて行かねばなりません。押し付けるのではなく、若い人たちの話しを聞く、若い人たちに教えを請うくらいの態度で臨まねばなりません。
 筆者に労働運動の何たるかを教えてくれた偉大な先輩たちは、教えを垂れる以上に話しをよく聞いてくれました。話しを聞いて意見をくれました。そうした中で、筆者も次第に自信がつき、今こうして本箸を執筆しているわけです。

 労働組合が、労働運動の壁になっているようではどうしようもありません。古い人間は、若い人たちの話しに熱心に耳を傾けなければなりません。また、どんな素朴な疑問、基本的な質問にもきちんと答えなければなりません。古手には常識であっても、それを理解できていないのが新人です。
 運動自体が運動の前に立ちはだかる事態をまず取り除く、まずはそこからです。そして若い人たちは、労働運動アレルギーをなくし、自分たちの言葉で自分たちの意見を先輩方に上申しましょう。ひとりの意見は愚痴や反抗ととられがちでも、複数の発言は意見として通ります。その団結力が我々の有する本当の力なのです。

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