タイトル

縦社会と横社会

 労働運動が衰退し、労働者の地位が下落し、とくに若い人たちの就職難や劣悪な労働条件、低賃金、これに伴う将来不安が深刻化している現在、今こそ労働運動を盛り上げ、雇用拡大と底辺層の労働者の賃上げを勝ち取って行かねばならないのですが、労働者の団結力がなかな発揮されず、運動は低迷しています。
 大企業は、不当労働行為によって労働組合の役員を抱き込み、かつまた多くの管理職、監督職を起用し、労働者への圧力を強化し団結力の分散を図っています。生産に関係のない無駄な人件費と経費が、社員の抑圧に使われているわけです。
 一方、労働者は、会社寄りの組合役員に不信感を抱き、複雑で難解な組合組織を持て余し、闘うことを忘れ保身に傾倒しています。運動を支えて来た人たちも後継者の育成に苦慮しています。
 会社側は、充分な時間と労力を使って労働運動つぶしができるのに、労働者の方は運動を盛り上げるための時間も人員も不足しています。
 さらには、政治も企業が人件費削減しやすいように、製品管理の規制緩和を行ない、契約社員制度のような劣悪な雇用条件を奨励しています。

 これが爛熟した社会の顛末なのでしょうか。国と企業が人を食いつぶすような社会に未来はあるのでしょうか。
 世の中は腹立つことばかりで、具体的な希望が見えて来ない状況ですが、社会はきっと変わります。政治や経済なんてものは、たちの悪い冗談みたいなものでして、人間社会というものは人々の見る夢なのです。人々に夢見る力が残っている限り、希望がついえることはありません。
 寝ぼけたことを言っているとお思いでしょうが、人間の歴史を見れば解るように、人は過去から連綿と創造と破壊を繰り返して来ました。創っては壊し、壊してはまた創る。政治も経済も留まることなく流動し続けます。
 そうした創造と破壊の中で、変わらぬものは、人々の夢と向上心なのです。多くの発明や発見、改革が人々の夢から生まれました。人々の「できたらいいな、あったらいいな」からすべては生まれたのです。

 オタクといわれる人種をご存知でしょうか。夢みたいなことばかりほざいて、美少女アニメとか見て、にへらにへら不気味に笑っている何とも怖い人たちなのですが、彼らは夢見る力だけで、理想や希望をホイコラ叶えてしまいます。そしてその営みは世間に大きな影響力を及ぼし、数々の流行を産み、大きな市場を築きました。アニメやコミックとそれに付随する文化は世界中に認知されるに至りました。
 彼らは、一見してひとりひとりバラバラに思い思いのことを勝手にしているように見えますが、ひじょうに大きくて強力なネットワークを築いていて、電脳世界と映像業界、音楽業界を席巻しています。指導者も上下関係も存在せず、中央集権も地方分権すらも必要とせず、壮大な文化圏を築いています。
 オタク社会の原動力は、まさに夢と希望であり、それを維持向上させるために、法規も条例もないのにシステムが維持されているのです。この大規模な横社会に学ぶものは少なくありません。

 労使の関係はある意味、縦社会と横社会の闘いであり高め合いであると言えます。縦社会は権力にモノを言わせて人心を掌握しようとし、横社会は信頼関係で成り立っています。縦社会の維持のために、上層部は下部へ力を誇示し、利益供与と引き換えに服従を要求します。これに対して横社会では、利益の共有とそれに伴う信頼関係を必要とします。
 縦社会を維持する人間関係は、しばしば脅迫関係(利権を失うのが怖いから従う)に変じ、上下の信頼は失われます。激しい競争と蹴落とし合いが絶え間なく続き、危ういパワーバランスの上に成り立っています。横社会は、形態が曖昧で一見して明確な社会構造が見えなかったりするのですが、強力な情報ネットワークのための様々な方法(くちコミ、コミュニティやサークル、インターネットなど)を自然発生的かつ必然的に確立しており、状況の変化や最新情報が社会全体に迅速に伝わり、柔軟にこれに対応することができます。
 縦社会がシステムを維持するために、様々な規制を設け、多くの経費と人材を費やすのに対して、横社会は組織性をあまり必要とせず、自由参加型のシステムで運営されています。
 人間社会では、縦社会と横社会が完全に独立しているわけではなく、縦社会の中にも階層ごとに横社会が存在しますし、横社会の中から縦社会が発生することもよくあります。人間はひとりで複数の社会(人間関係)に所属し、縦社会も横社会も経験しています。

 こうして見てくると、縦社会よりも横社会の方が人間性にあふれ温かみがあり、多くの利点を持っているように見えますね。それは横社会が人としての特性を発揮しやすい、言わば人間の本質に近い形態であるからです。そもそも横社会という言葉は、ふだん使われることもなく人と人との間にそれは自然にいつの間にか存在しているものなのです。これに対して縦社会は意図的に築かれたものです。
 縦社会も元々は、人々が豊かに共存し合うために、高い理想のもとに築かれるのですが、組織が成長して大きくなるにつれて、組織を維持することの方に重きがおかれるようになり、いつしか組織を守るために人間に犠牲を強いるようになるのです。人々を豊かにするための組織のはずが、組織が人を食いつぶしてしまうという本末転倒が生じるのです。
 会社が人を食いつぶし、労働組合ままでもが組織化が進んだ結果おなじようにふるまってしまう、これは言わば必然なのかも知れません。会社および労働組合が2重構造の縦社会となって我々労働者に襲いかかるわけですが、我々はそれを跳ね返して、権利と賃金を勝ち取り、なおかつ企業の不正を是正して行かねばなりません。
 会社側の大きな圧力に抗し得るだけの力が、我々にはあるのでしょうか。我々労働者の大きな武器は、横社会の持つ数々の利点です。我々は、横社会を維持するために策謀を巡らしたり、ウソを吐いたり不正を働いたりする必要がなく、正々堂々とまっとうな意見を主張することができます。
 労働者は、大企業という典型的な縦社会に対して、対等な立場に立つことができます。そして労働者同士の信頼関係と団結力があれば、企業の圧力を跳ね返し、要求を突き付けることができるのです。

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